オフィスの原状回復~どこまでが義務?
オフィスの原状回復~どこまでが義務?

賃貸物件の場合、しばしば「原状回復」が問題になります。
ここではこの「原状回復」について、
- そもそも原状回復とは何か
- 原状回復の範囲
- オフィスと住宅の違い
について解説していきます。
原状回復とは何? その意味について
まず、「原状回復とは何か」について解説していきましょう。
原状回復について知ろうとするのであれば、民法の第621条を見る必要があります。
“賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年の変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
-引用:国民生活センター・改正民法621
http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201912_08.pdf
これは、ごく簡単に言うのであれば、「借りた人間に責任があるもので、かつ普通に使っていたら生じないような損傷が生じた場合、借りた人間は契約終了時に部屋を『本来の状態』に戻さなければならないよ」と伝えているものと解釈できます。
たとえば、「新しく美しい白い壁だったのに、そこの住人が意図的にペンキで落書きした」などのような場合は、この「原状回復の義務」に基づき回復のための処置をしなければなりません。
この「原状回復」は、敷金トラブルなどのようなかたちでよく問題に挙げられるものです。
上では「賃借者に責任のある落書き」などを取り上げましたが、「普通に住んでいたのに、経年劣化で壁の色が変色した」などのような「通常の使用」によってできたものでも「原状回復を」と部屋の管理者が言い出すこともありました。
「どこまでが賃借者の責によるものなのか」によって判断が変わってくるため、これはしばしば裁判沙汰になります。昔からよく議題に上ってきた話ではありますが、現在でも同じようなことが起こる可能性は十二分にあります。
オフィスの場合は「住宅」以上に判定が厳しい
上記で述べたのは、「原状回復の基本」です。
賃貸住宅を借りた場合、賃借者に有利な判断が出されることもあります。
しかしオフィスの原状回復の場合、話は少し違ってきます。
もちろんすべてのケースで適用されるわけではありませんが、一般に、オフィスの場合は住宅ほどには「賃貸者の権利」は重要視されません。
たとえばオフィスの場合、「照明器具の取り換えは賃貸者側で行うべき」「経年劣化であっても、壁紙の張り替えは賃借者が担う」などの文言が契約書に盛り込まれていることが多いのです。また、床材や天井のボードの張り替え、さらには照明器具の撤去(賃借者の持ち込みの場合)やその回復などが賃借者の義務とされることがあります。
一般的な住宅を借りたときと同じような感覚でオフィスを使っていた場合、退去時に「原状回復をしろ」と言われて焦ることもあります。そのため、事前に契約書をきちんと確認してから申し込む必要があります。
このような「住宅とオフィスの違い」に驚く人もいるかもしれません。
しかしこれは、住宅とオフィスの立ち位置の違いを考えるとわかりやすいといえます。
オフィスはもともと経済的な基準を重視するものですし、そもそも個人の場合とは異なり消費者保護の考え(市場取引において不利な立場になりやすい個人の消費者は、保護しなければならないとする考え)を持つ必要はないと考えられています。
そのため、「住宅を借りた場合」と「オフィスを借りた場合」で、原状回復の範囲が変わってくるのです。
このような考え方が如実に表れるのは、「オフィスビル」です。経済的な基準に即して運営されるものの代表格であるオフィスビルは、特に「原状回復は賃借者の責任」と判断されることが多いといえます。
逆に「居室部分とオフィス部分が分かちがたく、1軒の家の中に存在する」などのような場合は、住宅における原状回復の考え方が適用されることもあります。
ただ「オフィスである以上、どんなささいな傷でも賃借者が原状回復の義務を負わなければならない」「借りる方が合意をしていなかったとしても、使用目的がビジネスであるなら貸し手側は原状回復のための費用を請求できる」というわけではありません。
このあたりの判断は、最終的には司法の手に委ねられます。そのため個別の事例を紹介することは難しいのですが、「住宅よりもオフィスの方が、賃借者側が原状回復義務を担う可能性が高い」「しかしすべてのケースで、『賃借者どんな場合でも原状回復義務を負う』とされるわけではない」という2点は押さえておくとよいでしょう。





